ベルギー・フランス旅行記 July.2005  【 4日目 ムーリス 】


● タリスでパリスへ

 ブリュッセル南駅からパリ北駅までは9:40発のThalysで行く。タリスは欧州の誇る時速300kmを超える高速列車だ。朝7時半に起きてシャワー浴び、荷造りし、8時半にチェックアウト。宿泊代はインターネットの割引価格で、週末からの特別料金129euro(約18000円)の3泊。これは安いと思う。部屋でのインターネット使用料が3日間で75euro(約1万円)。
 レセプションでタクシーを呼んで貰う。南駅までは約10分。駅の地下のタクシー停車場に着く。チップ込みで10euro。エスカレーターで1階へ。昨日下見をしてあるので特に迷わない。電光掲示板で乗車するタリスのホームや時間を確認してから、店の並ぶ駅構内をTUMIのバッグを転がしながら見て回る。ビア・バーがあったのでラッキーとばかり入る。「
Lino Bistro-Pullman」というバー。ベルギーのおねえちゃんが一人でやっている。MAESという生のピルスを頼む。1.3euro 安い! 次にGrimbergen brondeの生を頼む。2.3euro。グリムベルゲンか! ここでこの珍しい生を飲めるとは思わなかった。ビールの写真を撮ったら、隣の少し酔っていい気分の親父が英語で話しかけてきた。ひとしきりベルギーの料理が美味いだの、東京はでかくてブリュッセルは小さいだのという話をしてお別れする。ベルギーのビア・バーで地元の酔っぱらいと語るというのは嬉しい経験だ。

   

マースとグリムベルゲンの生


 Thalysに乗るために、定刻にホームに行く。First Class, Coach 22, Seat 11, Separate seat, meal includedと書かれた切符をしっかり確認する。ヨーロッパの列車はいい加減なダイアであることは経験済みなので用心していると、やはり定刻には来ない。あーあやっぱり変だ。待っている人も少しざわざわしている。ホームの駅員らしき人に聞いている時列車が到着した。しかし乗る位置が随分ずれている。あーあこれだもんな
 タリスの大きさは行きに乗ったTGVと変わらない。2列と1列の合計3列シートで日本の新幹線よりも横幅が小さい。座席の前後の間隔も狭いので新幹線の方が乗り心地がよい。僕の座席はその車両の最後尾なので出口に近い。狭い座席の足置きにTUMIの大きな鞄をつっこんで座っていると、女性の乗務員が出口部分に置いておけという。ドアを開けてそこに置こうとすると男性の乗務員が、荷物置き場は向こう側だけど(遠いから)まあここでもいいよ、みたいなことを言う。それはよかった。荷物に近いし、タリスはパリのNORDまで止まらないようだから盗まれる心配もない。出発してしばらくすると先ほどの女性乗務員が朝食を運んできた。このためにバッグがじゃまだったのだ。どうせまずい列車のおまけ料理など食べる気がないので小さなサンドイッチを1個取った。飲み物はベルギービール飲み納めかと思い、Stella Astoisにした。ところがこのサンドイッチが
意外に美味しくてびっくり! おかわりはしなかったがさすがヨーロッパはおまけのパンも美味いのかと感心。
 車窓はしばらく曇り空だったがパリが近づくにつれまた快晴になっていった。パリとブリュッセル間はThalysで1時間半。隣の国とは言え驚くほど近い。東京ー名古屋間より近い。EUなので国境も関係なく越えてしまう。あっという間。ほぼ定刻の11時20分にパリに着いた。女性乗務員が僕の手持ちのクラッチバッグを指して、盗られないようにねと言った。そのついでに彼女の写真を撮らせてもらった。

  

欧州の誇る高速列車タリス

  

タリス車内(赤いシート)とお手洗い

タリスの朝食と出入り口に立つ私

タリス乗務員 、 パリ北駅ホーム

右 イギリス行きの高速列車ユーロスター


● ホテル・ムーリス

 Paris Nord(北駅)にはロンドンまで行くユーロスターなども到着する。パリの北駅を出たところでタクシーに並ぶ。20分くらい並んだろうか。「オテル・ムーリス・シルブプレ」。タクシーはホテルへ到着。この陽気な運転手、どうも英語が通じない。おつりはチップだから受け取ってくれと言っても分からず、おつりを返そうとする。まあしょうがないのでおつりを受け取る。かといって感じが悪いわけでもない。まあいいか。
 ムーリスはチュイルリー公園の前、リヴォリ通りの建物の一部にある。five-star deluxeホテルとしてのプライドと情熱を持ったThe Dorchester Group の一つである。 広くはないが煌びやかなエントランスホールに立ち、チェックインを告げる。どうぞこちらへとかわいいホテルレディがデスクに案内する。高級ホテルならではの椅子に座ってのチェックイン。その後「今夜、レストラン・ムーリスを予約してあるのだけどどこですか?」「はい、レストランはこちらです」などとホテル内施設を案内してもらいながら部屋まで案内。綺麗な人に案内してもらって嬉しいと言ったら照れていた。電子キーを差し込まないとエレベーターは動かない。メリディアンでもそうであったがセキュリティはよい。部屋の前ではベルボーイがラッゲージを持って待機していた。部屋の中へ案内され、いい景色ですよと説明される。ポケットに忍ばせた2ユーロコインを渡す。メルシームシュー。ベルボーイが荷物を運び入れる。チップ。メルシームシュー。しばらくすると別のボーイが来て、ホテルからの日本語によるウエルカムメッセージが入った封筒をわたす。チップ。メルシームシュー。この調子ではコインが沢山必要かなと思い、後ほど出かけるときにフロントで小銭に両替してもらった。しかしこの後は意外にも帰るときにベルボーイに渡すまでポケットの中に常に忍ばせてあったチップコインは使わなかった。このホテルのエントランス・ドアは自動ドアで、ボーイの手を煩わせることはなかったからだ。
 荷ほどきをして、高級な部屋の雰囲気を味わう。窓からの景色、遠くはエッフェル塔、アンヴァリッドが、近くはルーブルが見える。空は雲一つない快晴。洗面ルームは大理石でシンクは2つ。シャワールームとバスタブが独立している。バスタブは180cm程の幅があり大きい。アメニティはイギリスのPenhaligon's Quercus。独立したミニバー部屋にラッゲージを置く。そこにはセキュリティーボックスなどがある。テレビはNHKが映る。
 出かける前に、持参した湯沸かし器を使い、パリの景色を見ながら、持参したチキンラーメンを食べた。こんなにチキンラーメンが美味いと思ったことはない。短期間の海外旅行でも(だからこそ)日本の味を求めてしまう、そのような肉体になっているのだなと思う。

(ムーリスのパンフレットより) レセプション

左 ムーリスのエントランス 、 左 エントランス・ホール

  

左 リフト 、 右 客室の廊下

明るく広い客室

ゴージャスな家具

高速インターネットは無料 、 TVはNHKも受信する

 

独立したシャワー・ルーム  シャワーヘッドは固定式

大理石貼りのバスルーム、シンクは2台、アメニティはPenhaligon

広いバスタブ、給湯では水平に湯が出て高級感を演出する

  

スリッパもある 、 ガラスドアの奥のトイレ

  

独立したクローゼット部屋にミニバーなどがある

    

ホテルのロゴが入ったグッズがある

ミニバーの下の冷蔵庫内のドリンクは豊富 、 セキュリティーボックス

ベランダからはチュイルリー公園の木立の向こうにエッフェル塔(左)やルーブル美術館(右)を臨む


● 美術館巡り

 チュイルリー公園の向こう側、セーヌ側の向こう岸にあるオルセー美術館へ向かう。公園の中を抜けていったのだが、厳しい真夏の日差しだった。公園の噴水に足をつけて座る若者も涼しそうには見えない。ソルフェリーノ橋(歩行者専用の開放的な広い木の橋)からゆったり進むセーヌ川の遊覧船を見ながらオルセー美術館に行く。美術館前では数分並び簡単なセキュリティーチェックをして入場し、入場券7.5euroを購入。オルセー美術館は昔、駅だったものを美術館に改装したものだ。それだけに独特の作りになっており建物内の空間を見渡すのも面白い。ルーブルと並んで人気のスポットだけに大変混雑していた。特にオルセーのウリであるゴッホやモネなどの印象派の展示ルームは歩くのも困難なほどであった。人混みの中での絵画鑑賞は、ベルギーの美術館を見た後では少しうんざりする。

左 チュイルリー公園内 、 右 セーヌ川

ソルフェリーヌ橋の上から

  

左 オルセー美術館入場券 、 右 オルセー美術館

オルセー美術館は駅を改造した建物なので内部が趣のある空間となっている

ゴッホ(しかしこの名画でこのさりげない展示が驚き) 、 印象派の展示室はどこも人だかり


 続いてメトロのチュイルリー駅から1号線に乗車しシャトレで下車。シャトレ駅は各線が交差しており広くて迷うほどだ。ポンピドー・センター目指して歩く。pm5ならまだ真昼のようだ。10分ほど歩いてやっと到着する。ポンピドー芸術文化センターは古典のルーブル、印象派のオルセーとともにパリ3大美術館の一つの国立近代美術館などを抱える。リチャード・ロジャーズとレンゾ・ピアノによる工事現場のような奇抜なデザインが目を引く。センター前の広場では似顔絵描きがたむろし、どういう理由からか、コンクリートの坂には沢山の人たちがセンターに向かって座っている(まるでイタリアのスペイン坂のように)。とりあえず出店でストロベリー味のミネラルウォーターを買って飲む。すでに足が棒のようだ。夜8時にレストラン・ムーリスを予約してあるのであまり長居ができないが美術館に入場する。7euro。陽の当たる透明チューブのエスカレーターで美術館の階まで上る。たまたま現代美術の起爆剤となった作品群の企画展(BIG BANG)が催されていた。これが期待以上に楽しいものだった。まずもって作品数が非常に多い。また画集などで必ず目にするような現代美術の有名な作品、例えばデュシャンのレディ・メイド作品の「泉」などもある。休憩用に置かれた椅子にときどき座りながら約1時間でざっと見て回る。他の階を見て回る体力も時間ももうない。ベルギー王立美術館とともに、いつの日かゆっくり見て回りたいと思った美術館である。ようするに現代美術が好きなんだ。

  

ポンピドー・センター美術館入場券とポンピドー・センター

左 透明チューブのエスカレーターで5階へ 、 右 BIG BANG展覧会

  

左 デュシャン「9つの雄の鋳型」 、 右 同「泉」

ポンピドー・センター前の絵描きさんら


● レストラン・ムーリス

 ホテルに戻りスーツに着替え靴も替え、8時に予約してあったレストラン・ムーリスに行く。2003年秋から新進気鋭のシェフ、ヤニック・アレノ氏(写真)を迎え入れてから一気にミシュラン☆☆になった勢いのあるレストランである。入り口で予約の旨伝えテーブルに案内される。宮殿のような造りと調度品に包まれた店内を見渡す。まだ他の客は1組か2組。日本人らしい男性3人のグループが居た。スーツにピシッと金髪の髪を固め、慇懃だが誇りに溢れた態度の絵に描いたようなギャルソンがやってきて、メニュー(carte)を渡す。若い女性のソムリエが来て、アペリティフを聞くのでシャンパンを注文 (29euro)。水は? ノン・ガスのミネラルEvian (9euro)。メニューからはMenu Degustation (170euro)を、ワインは、それぞれの料理にあったものがグラスで出てくるもの (130euro)を選んだ。メロンゼリーのAmuseからはじまり、とろけるようなフォアグラなど、絶品の料理が続く。ギャルソンに、素晴らしい料理だと声をかける。アレノ氏は2度ほど出てきて常連らしい客と話して去った。店内には10組くらいの客が居た。デザート3品を含み9品が続き、それぞれにワインが運ばれる。最後にCafe Expresso (7euro)を注文するころにはかなり酔いがまわっていた。途中1回トイレに立ったが、3時間のディナーであった。チップをつけて一人で400euro(約54000円!)の贅沢なディナーであった。
 詳しいメニューは以下の通り(ムーリスホームページより抜粋)。

 Yannick Alleno

Dinner at the restaurant Le Meurice
Menu de Gustation 170 Euro


Fresh anchovy seasonned like a tabouleh
Crispy southern vegetable fritters

Roasted duck foie gras
Dark cherries with maple syrup

Red snapper 'barbet' under the grill
Summer vegetable vinaigrette with mild spices
Artichoke puree

Brittany lobster flavored with verveine
Small potatoes and sweet chanterelle mushrooms
with dried apricots

Poached filet of beef with bone marrow
Early spring vegetables, horseradish slice of bread

Or

Breast of chicken from 'Bresse' region
Foie gras between skin and flesh,
chanterelle mushrooms and stuffed turnips

'Saint-Nicolas' goat cheese
Spicy craker and olive oil ice-cream

Iced macaroon
With pink grapefruit and poppy flower

Carabean chocolate fondant
'Speculos' ice-cream

(ムーリスのパンフレットより) 宮殿のようなレストラン・ムーリス


  


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