星のや July.2007
星のや / アクセス / 客室 / 温泉 / 食事 / ホタル / 星空 / 集いの館とライブラリー / 従業員 / 星のやの風景 / 石の教会・軽井沢高原教会 / セゾン現代美術館 / おみやげ

● 星のや
 星野嘉助によって大正3年に開業された星野温泉は数多くの文化人(北原白秋、島崎藤村、与謝野晶子、内村鑑三など)に親しまれる伝統ある温泉であった。近年、星野リゾートとして経営拡大を続け、世界ビール大会で前人未踏の7年連続金賞受賞した「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーインや、ホテル・ブレストンコート、軽井沢高原教会、アルファリゾートトマムなどを経営、2005年7月には星野温泉を全面改築し従来にない温泉旅館「星のや」として生まれ変わった。「日本が西洋化せずに独自の文化を発展させていたら、どうなっていただろうか」というテーマで、もうひとつの日本を感じさせる滞在型温泉旅館。水辺沿いに点在する離れ家風の客室が谷の集落を形成している。電力は自前の水力発電所でまかなっている。2006年グッドデザイン賞をはじめ、環境大臣賞など数多くの賞を受賞している。
 宿泊はネット予約が便利。2泊からの受付となっている。


川の周りに点在する隠れ家のような客室


谷の集落図

● アクセス
【名古屋から車で行く方法】
 名古屋インター(名神へ)→小牧ジャンクション(中央道へ)→岡谷ジャンクション(長野自動車道へ)→更埴(こうしょく)ジャンクション(上信越自動車道へ)→小諸(こもろ)インターまで(6550円)(ここまで休憩別で3時間)→浅間サンライン(一般道)で軽井沢に入り18号との交差点を左折、中軽井沢の交差点を左折して1分(小諸から20分)。
 星のやの看板を右折して駐車場へ。ここは村民食堂、トンボの湯、星のやのある場所よりも南に1分。チェックインは午後3時。環境音楽演奏と、ノンアルコールの甘酒が供される。ここから日産キューブで客室まで送ってもらう。部屋着を作務衣と浴衣から選択できる。星のやオリジナルの作務衣がおすすめ。従業員は従業員用の作務衣姿だ。
 チェックアウトは、星のやの「集いの館」にあるフロントで昼12時までに行い、客室までキューブが迎えに来て、駐車場まで送ってもらう。


環境音楽の「長屋和哉」直伝の演奏で迎えられる

● 客室
 星のやの敷地内には湯川の支流が流れている。その周りにそれぞれ特徴的な家紋が描かれた民家のような客室が建てられている。家々の1階と2階は入り口が別で独立しておりそれぞれが別の客室になっている。部屋毎に少しずつ造りが異なっているとのこと。敷地内の木は工事中移植されまた植え直されたものだとのこと。だから木々は昔からそこにあったように自然に生えている。小道と橋、棚田の風景、小川のせせらぎ、それは忘れられた日本人の原風景か。

 
川に面した「水波の部屋」、路地に面した「山路地の部屋」「庭路地の部屋」にカテゴライズされる。今回は水波の部屋の2階を利用した。
 玄関から2階に続く大理石の階段を昇ると洒落た彫刻が掛けられている。引き戸を開けると天井吹き抜けの広々とした寝室。天井には風楼がある。枕元の壁には手漉き和紙が貼られている。部屋にはテレビはなく、インターネット接続環境もない(集いの館のライブラリーは無線LANスポットとなっている)。あるのはCDプレイヤーだけ。ゴンチチの曲が流れていた(ライブラリーで無料のCD貸し出しが利用できる)。部屋の構造のためかCDの音はやわらかく広がりがある。電話はBang & Olufsen製。冷蔵庫にはちゃんと「よなよなエール」も入っている。しかも260円、定価なのが嬉しい。飲料水が冷やされている。無料のコーヒーパックもある。もちろん湯沸かしポットはある。寝室のクローゼットには蚊取り器、殺虫スプレー、虫除けスプレー、ムヒ軟膏が常備されている。セキュリティーボックスもある。パジャマがある。選択した部屋着とその上に羽織るもの、下駄履きのための靴下(これは持ち帰り可能)が置かれている。エアコンは壁に埋め込まれている。時計や目覚まし時計は無い。


手漉き和紙の壁、やわらかな灯りの照明




テレビやネット環境は無い。CDプレイヤーだけがある


よなよなエール \260
軽井沢高原ビール \370
その他のドリンク \210
ナッツ \420
枝付きレーズン \370
チョコレート \580

 居間はテラスに面している。掘り炬燵式。ソファにはクッションが21個も置かれている。テラスにはソファが置かれている。しかしこの季節は蚊が多く(人に関心が無いようで意外に刺さないが)そこでくつろぐことは難しい。網戸があるので部屋に入ってくることはない。テラスからは川と家々の風景が望める。さすが軽井沢、梅雨にもかかわらず蒸し暑い空気ではない。窓を開けていればクーラーはいらない。


壁一面の窓に緑の景色が広がる。ロールスクリーンを下ろせばシックな和室になる


リゾートの雰囲気を演出するテラス

 洗面所のシンクは深く使いやすい。オリジナルの石鹸。歯ブラシ、歯磨き粉、櫛、バスキャップ、髭剃り、シェイビングフォームとユニークな洗顔料「うぐいすのはな」がある。財布や鍵を持ち運ぶのに重宝する風呂敷柄のオリジナル袋がある。これらは持ち帰り可能。ドライヤーある。
 トイレと風呂の床は天然石。トイレはウォシュレット。風呂は壁と浴槽が檜。風呂にはこの季節、薄荷(ミントの葉)が添えられている。湯張りは自動でストップする。窓を開ければ半露天風呂となる。木製のブラインドを調節すれば外からは見えない。木々の緑、小川のせせらぎを聞きながら入浴できる。


深いシンクが使いやすい


洗面アメニティ


ウォシュレット。天然石の床


薄荷が添えられていた。掃除の時に補充される


檜の香りがひろがる部屋風呂


窓を開ければ半露天風呂の雰囲気。緑と小川のせせらぎを聞きながら

● 温泉
 100年の歴史ある温泉は「美肌の湯」として知られる。メインの「トンボの湯」では毎分400リットルのお湯が注がれている。もしも真水をトンボの湯と同じ成分にするとしたら入浴剤を1分ごとに20袋投入し続けることになるとのこと。源泉かけ流しの温泉らしく、温泉成分が結晶化した湯ノ花が見られる。うっすらと白い色の湯。この温泉水は飲むことができる。胃腸病や便秘に効果があると言われる、まろやかで飲みやすい水なのでつい飲み過ぎるとお腹が緩くなる。

「トンボの湯」は星のやの敷地外にある。客室からは散歩がてら5分ほどで行ける。宿泊客はいつでも何度でも無料で入れる。朝9時から10時までは宿泊客の限定となる。入場は夜10時まで。一般客は1200円。男女別。入り口でタオルを渡される。内風呂の大浴場と露天風呂とサウナがある。




「メディテーションバス(瞑想の湯)」は星のやの敷地内にある宿泊客限定の温泉。午後3時から翌朝11時半まで。夜11時以降はセキュリティーのため暗証番号が必要。館内にはBGMには長屋和哉の環境音楽が静かに流れている。リラックスルーム、脱衣室(無料の小ロッカー8個、歯ブラシ・髭剃りもある)、森の天然水の飲水所、個別に区切られた洗い場、サウナ、打たせ湯、壁から光の入る「光の部屋」、湯の中に小さい灯りがある以外は真っ暗な「闇の部屋」がある。特に闇の部屋が印象的。深夜など怖くて入れないという人もいるようだ。しかし昼間に行ってみて、大丈夫なら逆に他人の少ない深夜の方がおすすめかもしれない。


瞑想の湯とスパのある建物


夜11時以降は暗証番号が必要




森の天然水で水分補給


75℃のサウナ。おすすめ


光の部屋。闇の通路を進むと闇の部屋がある


火照りを冷ますリラックスルーム

● 食事
 食事をする場所は星のや関連では5箇所ぐらいある。
1)レストラン(和食)「嘉助」:星のや「集いの館」内
 「吉兆」出身のシェフが手がける高級和食レストラン。フロント横から棚田状の客席が並ぶ。壁一面の窓からは緑溢れる棚田とその間を流れる小川が見える。テラス席では自然の息吹の中で食事ができる。敷地内のため宿泊客の部屋着のままで気軽に利用できる。朝食は朝7時からなんと12時までできる。ゆっくり寝ていても大丈夫だ。
 朝食のお膳は3200円。リンゴジュース、小皿が5品、白米かトウモロコシ入り赤米、味噌汁、蒸し焼き1品、炭焼き魚3種から1種選択、ゼリー、コーヒーか紅茶。それぞれ一手間かけられておりどれもが美味しい。テラス席で頂いたが、草の香り、小川のせせらぎで食欲が進む。夕食は12000円の懐石。


集いの館1階に「嘉助」はある


外には棚田の景色が広がる


天気が許せばテラス席がおすすめ


2)レストラン(フランス料理)「ノーワンズレシピ」:ホテル・ブレストンコート内
 星のやから車で2-3分の所にあるホテル・ブレストンコートは星のやの系列。予約が必要。フロントに言えばレストランまでキューブで送ってくれる。帰りも食事が終わった頃に迎えに来て部屋まで送ってくれる。部屋着のままでは行けない。朝食は2800円。ディナーはコースで8000円。その日は、パン、アミューズ3品、前菜2品、魚料理1品、口直し1品、肉料理1品、デザート1品、コーヒーか紅茶であった。ラストオーダーは夜8時半。




アミューズの3品。ガスパチョが美味


アスパラでシャルロット(帽子)を作りその中にウニ、イクラ、ホタテ、エビ、カニを入れた前菜


マッシュルームの濃厚なスープにポルチーニを載せてある前菜。これはとても美味しい

3)カジュアルレストラン「村民食堂」:星のやに隣接
 昼時は一般のランチ客で混雑している。有名な「よなよなエール」の樽生650円が飲める。そば料理を中心に定食ものが多い。予算は1000円から2000円。朝11時から夜10時まで。




世界ビール大会で前人未踏の7年連続金賞受賞ビール「よなよなエール」の生が飲める

4)カフェ「ハングリースポット」:村民食堂と同じ建物内
 ここでも「よなよな」や「軽井沢ビール」の生が飲める。値段は同じ。村民食堂と同じように「胡麻ソフトクリーム」320円などもある。


5)ルームサービス:
 24時間利用できる。様々な料理がある。やや高いが嘉助よりは安い。夜中でも利用できるのがよい。部屋自体が素晴らしいので部屋でも食事がしたい。我々はチャーハン1800円、おにぎり1000円、信州牛のたたき1600円を注文した。


● ホタル
 星のやには第一回エコツーリズム大賞受賞の「ピッキオ」というネイチャーツアー会社がある。今回「蛍鑑賞ツアー」を申し込んだ。夜7時15分から8時40分まで、一人7000円。星のやのフロントに集合。用意された長靴に履き替える。ツアー担当はピッキオの金田さん。笑顔を絶やさない女性だ。車で10分程度の南軽井沢へ。団体の蛍ツアーが来ないような知られていない場所へ。たまにしか車の通らない農道脇の小川のほとりを歩く。街灯などの照明もない場所。やがて陽が落ちる頃、一つ、また一つと空中で光るものが現れる。ゲンジボタルだ。まるで粉雪が光っているかのようにゆっくりと飛んでいる。辺りがすっかり暗くなる頃には何十匹もの蛍が乱舞していた。草むらの道にゴザを引いてジャスミンティーとういろうでティータイム。その時に利用した蛍光品をかざすと、興味を引かれた蛍が寄ってくる。手で簡単につかまえられる蛍をルーペで観察しその後逃がしてやる。約1時間そのように過ごし帰路につく。

● 星空
 夜、瞑想の湯に向かう途中空を見上げると、都会では見られないような星々。プラネタリウムのようだ。星が大きい。空が近い。天の川も見える。5分ほどで流れ星も見える。

● 集いの館とライブラリー
 集いの館にはフロント、お土産ショップ、嘉助、キッズルーム、ライブラリーがある。ライブラリーにはくつろげるソファーとソファーベッドがあり、写真集などの蔵書を見ることができる。CDは自分でノートに記入し部屋に持ち込める。コーヒー、紅茶、ハーブティーやマシュマロなどのお菓子類はセルフサービスで利用できる。ここは無線LANスポットとなっている。


星のやのフロント。従業員もみな作務衣姿だ


ライブラリーのソファーベッド


オリジナルのハーブティーがおすすめ

● 従業員
 従業員教育は徹底しているように思える。笑顔を絶やさない。それが自然な笑顔に見える人とそうでない人はいるが、やる気は感じられる。若い人が多いのも印象的。このBGMは誰の曲か、とか、我々の泊まっている部屋の大きさは何平米か、などの質問に即座に答えが返ってくる。車での送迎など適時受け付けておりほとんど待たされることはない。従業員の数は多いように思う。しかし昼間レセプションにいた人が夜はルームサービスを持ってくるなど、一人が何種類もの仕事をしているようだ。それはおそらく人数の問題ではなく、仕事を横断的に知るための工夫だろう。高級宿泊施設の善し悪しの判断が、従業員の態度によって左右されるというのは昨今のブームであり常識だから。

● 星のやの風景
 朝は宿泊客限定の温泉に向かう。作務衣姿のまま星のやオリジナルの小物入れをぶらさげて路地を行き、橋を渡る。緑の林ですれ違う宿泊客と挨拶をする。与謝野晶子と鉄幹の俳句が刻まれた石碑がある。やがてトンボの湯に到着する。帰り道、鴨の親子が池で餌を探すのに遭遇する。


小川と橋と緑の美しい調和


なだらかな起伏のある小道が続く


あたかも現実の村と錯覚させる星のやの風景


生き物たちも自然のままで過ごしている

 夕暮れになると小道に灯りが灯り始める。天候がよければ川に行燈の蝋燭が灯されるという。夜の温泉につかる帰り道。すっかり暗くなったが、足許のほのかな灯りで迷うことはない。自然に似せてゆらぎのように曲がり微妙に高低のある小道。リゾートの改築前からあった木々は自然のままに生えている。小道の両横の家々の窓から漏れる暖かい灯りは、その時だけの宿泊客のものではなく、あたかもこの集落に生まれ育った人々が住んでいるかのように錯覚させる。川のせせらぎの向こうにも小道の照明が点在しそれはまるで川向こうの町で夏祭りでもやっているかのようだ。やがて宿泊している部屋を表す表札が灯る我が家に到着する。


夕暮れになると小道に灯りが灯り始める

● 石の教会、軽井沢高原教会
 星のリゾートのホテル・ブレストンコート、石の教会、軽井沢高原教会は星のやとは公道をはさんだ向かいの敷地内にある。フロントに言えばシャトルバスを出してくれる。
 石の教会は内村鑑三記念堂と礼拝堂からなる。内村鑑三は明治大正のキリスト教学者である。星野温泉を好み星野嘉助と親交があった。石の教会はフランク・ロイド・ライトの愛弟子ケンドリック・ケロッグの造った古代の遺跡を思わせる建築である。記念堂までの小道はウグイスの鳴く林の中にある。途中内村の言葉の書かれた石碑がある「I for Japan. Japan for the World. The World for Christ. And All for God.」。礼拝堂は結婚式の予約で一杯だ。式の合間に見学できる。




内村鑑三の記念碑


記念堂入り口、礼拝堂へとつながる


神秘的な礼拝堂


石の教会の遠景

 一方、高原教会は大正10年から続く伝統ある教会。石の教会と同様に結婚式の予約で一杯だ。礼拝堂は式の合間に見学できる。隣の牧師館では話し好きな牧師の奥さんが紅茶をいれてくださり、結婚式にまつわる話をしてくださった。また、教会の前にはクローバーが生えており四つ葉のクローバーを摘むのをすすめてくださった。


石の教会よりも大きめの木の温もりのある礼拝堂


隣の牧師館は見学自由

● セゾン現代美術館
 星のやから北に5分ほどの場所にセゾングループが経営するセゾン現代美術館がある。森の中にあるため公道からは見えない。さびれた雰囲気の駐車場に車を止め、林の中を歩くと広い敷地が開け、安田侃やイサムノグチの彫刻が点在している芝生に出る。館内の造りはやや古さを感じさせる。所蔵作品には現代美術の有名な作品も多いが暗い作品が多いので好みが分かれるだろう。好きではないが印象に残ったものとして例えばアンゼルム・キーファーの「革命の女たち」がある。汚れてへこんだベッドが並ぶ。その枕元には名前の書かれたプレート。リアルで恐い空間。しかしこの作品は観覧者によって傷つけられ修復中とのネット情報があった。なるほど入場券とともに厳しい口調で書かれた注意事項の紙を渡されたわけがわかった。ミュージアムカフェでは、バナナケーキが美味しいのでケーキセット800円がおすすめ。

● おみやげ
 星のやギフトショップで部屋着として使用した作務衣を購入した。さらりとした肌触りで紫色もよい。13000円。星のやのあちらこちらで耳にした環境音楽、この地方出身の音楽家、長屋和哉のCDを購入2940円。Amazonでは手に入らないようだ(長屋和哉のホームページからは購入できる)。




inserted by FC2 system